【Special Interview】中島瑞生さん(新国立劇場バレエ団)が語るバレエとピラティス

今回は、新国立劇場バレエ団 ファーストアーティストとして活躍している中島瑞生(なかじまみずき)さんに、バレエとピラティスについてお話を伺いました。バレエダンサーにとって大切なボディコンディショニング。海外と日本の環境の違いや、プロのダンサーたちがどんなコンディショニングなど、とても興味深いお話を聞くことができました。

― バレエとの出会い

叔母がバレエ教師をしているんです。当時、僕が欲しかったインコを買ってあげるからと乗せられて、半ば強制的に個人レッスンを受けさせられたことがあったんです。ただ、みっちりマンツーマンの稽古をさせらられて、辛くて辞めました(笑)

その一年後に、ふと、将来何の仕事するか悩んでいた時に、バレエを思い出し、今度こそは続けてやってみようと自分からお願いして正式に習い始めました。

― ダンサーのコンディショニング事情

Q:新国立の研修所ではピラティスなど、ボディコンディショニングは必修でありましたか?

研修所では、身体性の向上や身体のリリース、メンテナンスを目的としたボディコンディショニングの授業が、リハーサルやレッスン終わりにしっかりと組み込まれていました。そこで、それまで分からなかった体のケアの方法を沢山教わりました。

Q:海外のカンパニーでは、フィットネススタジオやピラティスルームがありますが、所属カンパニーではどうですか??

いわゆるマシンがたくさん置いてあるような設備が潤沢に整っているスタジオはありませんね。最近は、小さな部屋の一角にトレーニングマシンが一台導入されたり、その使い方を指導していただけたり、以前よりはトレーニングができる環境になってはきています。もっと様々な種類のマシンが使えるようになればなと常々感じています。

そのかわりではないですが、現在所属しているカンパニーでは、ジャイロキネシスやトレーニング等を教えにトレーナーの方が来てくれます。自由参加で月2回ほど、セッションを受けることができます。

それ以外は、整体へ通う人はとても多いです。他にも個人的に外部でピラティスやジャイロトニック、ジャイロキネシスなどバレエに応用させやすいトレーニングをしている人もいます。外部でのトレーニングに対する補助は一切ないのが現状です。

Q:なかなか海外のカンパニーのような環境が整備されていないのはなぜだと思いますか?

バレエの業界が海外ほど社会に認知されておらず、金銭的な援助が受けづらく資金の規模が少ないことで、カンパニーが団員のトレーニングまでは費用を割けないからかな?と思います。

― ピラティスを本格的に始めたきっかけ、そして今・・・

Q:ピラティスを始めたきっかけは?

普段、時間の限られたバレエ団のレッスンだけでは自分の身体を隈なく把握することが難しく、使い方や身体感覚が偏ってきたように感じていました。今一度身体の使い方を見直そうと思い、本格的にピラティスを始めました。

ピラティスを始める前は、整体へ通っていた時期もあったのですが、、忙しくて時間がなくなり、自分でストレッチやマッサージでケアをすることがほとんどでした。

Q:数あるピラティススタジオの中で、なぜSky Pilates TokyoSkyに?

バレエに対する知識や経験が豊富にあるトレーナーの方がいるからです。

セッションを通して、踊っているうちに忘れてしまったバレエと身体に関する基礎的なこと、今まで自分が誤解していた使い方、今まで至らなかった新しい身体の感覚を論理的に学ぶことができています。自身で踊る時に様々な発見があるのはもちろん、誰かに教える時にもとても参考になっています。

Q:お気に入りのエクササイズは?

スパインコレクターで、アラベスクとアチチュードを繰り返したり、パンシェをするエクササイズを行うと、次の日のアラベスクが上体を崩さずに普段より高く上がるのでとても気に入っています。

逆に、リフォーマーの立位で内転筋強化をするエクササイズは、とってもきついです(笑)バランス感覚も必要ですし、どうしても踵に体重が乗りすぎてしまったり、膝が緩んだりしてしまうのを内腿を使ってコントロールするのがすごく辛いです。

Q 自宅やクラス、リハーサルの前などでも、取り入れているエクササイズなどはありますか?

ひとつは、足の裏で床を掴む感覚を得るためのエクササイズ、「足裏ボール掴み足首回し」です。ボールを離すまいと足裏の筋力が鍛えられると同時に、足首の可動域を広げレッスン前のウォーミングアップにもなるのでとても気に入っています。

もうひとつは、ピラティスの時間で行う腹筋です。背中と床の間にボールを置いて潰さないように足を動かすエクササイズです。思いの外ものすごく腹筋を使い、すぐに持久力が切れてしまうため、今の自分に足りていないものと思いなるべく頻度を多く行うように心がけています。

舞台前は、温度が低く関節を冷やしやすいため、膝や足首を温めるウォーミングアップからスタートするようにしています。

Q:プロのダンサーがピラティスをやったほうがいいと思う理由をいくつか教えてください。

やはりプロになると、どうしても自分の身体の使い方を見直す機会が減ってくるんです。ですので、常に細心を払って、体を客観的に見続けないと自分の癖が出てバランスが崩れてくるように感じます。ピラティスは、身体的な機能の面からそのバランスを正していけるのでプロのダンサーにとってとても有意義なトレーニングだと思います。

Q:今後どういうダンサーになっていきたいですか?

もともとバレエを観賞される方を魅了するのはもちろんのこと、まだバレエを観たことがない人達が興味を持って観に来てくれて、そして感動して帰っていただけるような、バレエを誰もが楽しめる芸術として魅せることができるダンサーになりたいです。

中島 瑞生 Mizuki Nakajima

小学4年生でバレエと出合い、その1年後、真島恵理バレエスタジオで本格的に始める。2012年、新国立劇場バレエ研修所に入所。予科生、本科生と学び2016年、新国立劇場バレエ団に入団。2021年には『白鳥の湖』ベンノ役、2022年に『不思議の国のアリス』白うさぎ役、『ジゼル』ぺザント、2023年に『ドン・キホーテ』のエスパーダ役と、ファースト・アーティストながら注目され、今回、世界初演となるこどものためのバレエ劇場2024『人魚姫』では王子役に抜擢されました。

撮影:Shogo Kamaura